爪先 | 天羽 均
女よ、夢幻であってくれるな
白くうかんだその胸に
埋め込まれたナイフのように慎ましやかで
滲み出る血のように艶やかに
我を退屈させてくれるな
我を軽蔑してくれよ
つつみこまれた瞳のように
研ぎ澄まされた指先のように
華やかで美しくあってくれよ
ひとときの愉楽をもてあそんで
罪やかなもてなしをしてくれよ
つまらぬ思いはすてて
我をもてあそんでくれよ
ときめきは続いているのだから
爪先はとどいているのだから
行き先を告げる前に
涙をとめる前に
我を隠してくれるな
我を…