熱帯魚 | 天羽 均
鏡を前に我は言う
『おまえは誰? 美しき人』
そして鏡は応えて言った
『それは貴方だ、美しき人』
狭い部屋に入れられた、私を見ている瞳が三つ
鏡に囲まれ私は踊る、火照る体と仲間と共に
呼吸につられて温度が上がる
噴き出る汗は、お客のために
瞳に抱かれて我は言う
『あなたは誰? なまめく人』
そして瞳は応えて言った
『きれいな身体、私も欲しい』
硝子を通して何かが見えた、圧迫してくる奇妙な空間
空気の泡に顔を埋める、篭もり始める時間を避けて
明るく照らす光に揺れる
私はいつも、見られてばかり
心を閉じて我は言う
『貴様は誰? 殺したい人』
そして心は応えて言った
『貴様自身だ、知ってるだろう』
鏡に映る裸体がきれい、陶酔境の呼吸が三つ
淫靡に染まった私が世界
妖しい目見さ、鏡の中の私に見られて