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慈愛 | 天羽 均

 私の、願いを聞いてくれるか
はい、なんでしょうか
私が目を閉じるまで、おまえの顔を見させてくれ
はい
そして、私が目を開けたとき、最初におまえの顔が見えるようにしてくれ
はい、わかっています
そうだな、おまえが一番、私の心を理解してくれていたな
 顔をよく見せてくれ、ああ、そんなに悲しそうな顔をするな
  ああ、おまえの顔がよく見えなくなってきた
   おまえには苦労かけたな
    おい、こんな時に、泣くものではない
貴方も、もう、お泣きになってらっしゃいます
そうか、私にとっておまえは何だったのか
 今更のことだが、何故か、大事なことのように思える
  安らぎと言っても足りない、喜びと言っても足りない、おまえはどう思うね
どう、と言われましても、わたくしは、わたくしですから
そうだな、私にとっても、おまえは、おまえなのだろうな
 私は眠くなってきた、少し寝るよ
  わかっているね
わかっています
そうか、ありがとう、じゃあ、もう寝るよ……
ああ、わたくしのほうこそ、お礼を言わせてください
 貴方の御陰で、わたくしは幸せを得ることができました
  貴方の優しさに、愛に、わたくしは悲しみというものを感じなくてよかったのです
   貴方がわたくしの顔を見てくださったあの日から、今のこの時までも、わたくしは、
    その瞳に包まれていたのですから
 本当に、お寝になられたのですね、先生をお呼びしなくてはいけませんね
  最後まで、さよならをお言いになられなかった
   貴方自身への厳しさなのか、わたくしに対する優しさなのか
    どちらでもよいことですね
 わたくしは、貴方が羨ましい、そのお強さも、この運命も
  最後に、わたくしにも言わせてください
   今までも、これからも、……いえ、やっぱりやめておきます

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