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恋人 -月色- | 天羽 均

 静かな闇 消え逝く橙色の帯
一人、風を感じ僕はたたずむ
 冷ややかな空気 湿っている気流
一人、湖面を見つめ君は泣いている

どうすればいいのか解らない
結ばれぬ運命に、理解なき人々に
今、僕は押し潰されてしまった
このまま二人手をつなぎ、かわらぬ世界へ旅立とう
これが強さとは思わない
でも僕には何が夢なのか、もう解らない

 静かな森 聞こえてくる虫の音
もう、だれも見ていないところで
 冷たい湖水 濡れてゆく樹木
ぬけそうな闇のうえで、銀に輝く月が見ていた

もうこのまま消え去ろう
君と離れてしまうのならば、僕は生きても仕様が無い
もし君ではない人を愛せるのなら、これ程苦しまずにすむのに
さあ、このまま旅立とう
夢見ぬ人々を置き去りにして
だれもいない、湖水の中に

 静かな湖底 停まり逝く鼓動
弾けそうな光の中で、冷たく浮かぶ月が見ていた

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