人間 | 天羽 均
瞳を閉じて、わたしを見てごらん
感性の中で蠢いている影があるだろう
なかば腐乱したその影が、わたしなのだ
勇気を出して、話し掛けてみれば分かるはず
涙を流して、助けを求めているはずだから
見えるものは何もなく、聞こえるものも何もない
反射神経だけで動いているそれには、安らぎだけが救いなのだ
手を振り上げて下ろすだけで、首は落ちるはず
それが嫌なら、火をつけて燃やしてしまえばいい
安らぎを与えてやれ
それには生きることしか教えていないのだから
生きることがつらくとも、他の道は選べない
死ぬことが喜び、消滅が安らぎ
恐れることはなにもない
死ぬことだけが、救いになるのだから
あなたがしてくれたそのことが、わたしのためになるのだ
夢を信じることもいい、感動を求めることもいい
でも、今だけは現実を見ていてくれ
わたしのために、戸惑いを隠しきれないあなたのために
お願いだから、影の動きをとめてくれ
わたしの希望は、ただそれだけだ