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スピード | 天羽 均

 夜が泣いていた
朝霧に紛れ、総てが変わってゆくと
 月が泣いていた
変わってゆく僕のために、涙を雪に託して

少しずつ昔のものを捨ててきた
今の僕は昔とは違う
鼓動の音さえ変わっていた
総てのものを取り入れて、僕の組織は剥がれてゆく

 貴方が泣いていた
このままでは、分からなくなるほど変わってしまうと
 母が泣いていた
変わってしまった僕を見つめて、偽りの肉体を捨ててくれよと

流れている時間とスピードが変えてしまった
かつての僕は既に死に絶えた
笑い方さえ変わっていた
皮肉な嘘をつき過ぎて、僕の心は包まれてゆく

鼓動の音が教えてくれた、頭の中に何かがいると
僕は気付いていたはずだ、奇妙なまでに歪む心を

 身体が泣いていた
危険を感じても、止まれない薄弱に
 僕が泣いていた
朱に染まろうとして、緑になった愚かさに

瞳の色が語ってくれた、独りで生きることのつらさを
僕は気付いていたはずだ、痛みを忘れて凍る心を

 僕が泣いていた
醜く変わり過ぎていた、心の意味に気が付いて
 時が泣いていた
もう、元には戻れぬことを

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